第9回TOPANGAチャリティーカップ ボランティアレポート

午前6時、ゆりかもめ「台場」駅前。寒かった……。

22000字ほどの相当長いレポートなのでお覚悟を。 短くまとめて読みやすく、というのをあえて避けて詳細をできるだけ余さず記載する方針です。

どうしても全部は……という方は目次からジャンプしたり、見出しやまとめ等をかいつまんでください。

初めに

第9回TOPANGAチャリティーカップ(2019年12月28日開催)でボランティアを募集していたので、日頃からプレイヤーを配信や大会で応援する立場として協力できればと申し込みました。 そして当日の朝から夜までおよそ16時間、ボランティアスタッフを務めました。

その感想は……正直に言って、格ゲーに限らず自分が今までスタッフとして参加したイベントの類では最悪の部類のものでした。 感情に任せれば、Twitterで罵詈雑言を浴びせて二度とボランティアなんかしねえ! と叫んで終わりのレベルです。

しかし、自分は格ゲーもSFVもFGC(Fighting Game Community)もTOPANGAも大好きな観戦勢です。 今回の経験にはいろいろと思うところあり、TOPANGAを初めとする大会運営、スタッフ、参加選手、そしてボランティアの方へ今後のために知ってもらえればと記事しようと決意しました。

なお、以下は「実際に起きたこと」「筆者が想像したこと」「想定される原因と改善方法」に分けて記しますので、その点は誤解なきようお願いします。

筆者プロフィール

自分のことを言うのは恐縮なのですが、「偉そうなこと言おうとしてるお前(筆者)は格ゲー大会の何が分かるの?」と問われれば、はっきりと答えられます。

「分かりません」

CPTやEVOJ、Red Bull KUMITEなど配信を見ているばかりで運営やスタッフの経験は皆無です。 しかし、格ゲー大会以外ならば、ゲーム会社に16年間勤めてファンイベントやロケテのアテンドを務め、小規模同人誌イベントの主催や中規模同人誌イベントのスタッフなども経験しています。 なので、あえてFGCありきではないイベント運営の観点から述べさせていただきます。 もう一度言っておくと「あえて」です。

ちなみに当日はニット帽に眼鏡で必死こいて働いていたオッサンです。その節は選手、スタッフ、ボランティアの方々には大変お世話になりました。

募集要項と実際の内容

募集段階や事前の問い合わせに対する回答は以下のような感じでした。

①作業時間は7時~21時予定 ②主な作業は「大会審判」と「受付作業」、二組に分かれてそれぞれレクチャーアリ ③軽食の準備アリ ④スタッフTシャツとTOPANGAタオルを提供 ⑤選手としての大会参加OK ⑥持ち物は「スタッフTシャツの下に着るもの(長袖T推奨)/モバイルバッテリー(お持ちであれば)/筆記用具」 ⑦未経験であることを事前にメールで問い合わせた際に『未経験の方も多く、一般的な大会と違いチャリティーの属性がある本大会では「ミスは許されない」といった状態ではなく、当日集合後も運営におけるレクチャーがございますので、ご安心ください。』と回答 ※上記と公式サイトに記載されている内容以外に、事前説明や資料は無し。

実際は

①作業時間

事前に連絡された集合場所にスタッフがおらず「前夜に集合場所変更のメールをした」そうだがボランティアの誰も受け取っていなかった。結果、10分遅れでスタッフが迎えに来た。休憩時間は不定でスタッフによる指示。試合終了は午前0時。ボランティアスタッフは残れる時間まで残った模様(自分は23時まで)。

②作業内容

大会審判と受付作業への明確なグループ分け、大会審判に関しては事前の詳細なレクチャーは無し。朝の設営と夜の撤収作業も十分すぎるほど「主な作業」だった。

③軽食

軽食は無かった。

④Tシャツとタオル

タオルの配布漏れ(途中帰宅したボランティアの方など)はあったが、提供は行われた。

⑤選手の大会参加

ボランティア自身の判断で作業を抜けて大会に参加した模様。

⑥持ち物

モバイルバッテリー持参と言われても、そもそもスマホを使うのか、スマホで何をするのかの指示なし。

⑦当日のレクチャー

『当日集合後も運営におけるレクチャーがございます』と呼べる事前レクチャーは無し。その場その場でスタッフがバラバラにボランティアへ指示する状態。

一言で言えば、「まるで話が違う」。 特に状況を知って欲しいことを以下に述べます。

朝の集合

7時集合なら15分前には着くようにし、地元の早朝の少ない電車本数から6時過ぎには台場に着いていました。 少し時間を潰して集合場所に行っても、建物内にいるというスタッフTシャツを着た人間はいません。そもそも「Zepp DiverCity(TOKYO)正面入場口周辺」と言われており、スタッフがいないので実際の名前である「Zeppゲート」で良いのか不安になります。 もしかしたら同じボランティアの人かもしれない人達が、同じように右往左往していました。 そして7時になってもスタッフは現れず、不安だけでなく体調も悪くなってきました。 当日の早朝はかなり寒く、風も吹きっさらしの外で待たされるのはあまりに苦痛だったのです。 結果、10分後にスタッフが現れましたが、この時点で「せっかくボランティアに来たのに寒空の下で何の連絡もなく放置された」と思わざるを得ませんでした。 正直、7時半くらいまでこのままだったらもう帰ろうと考えていました。

事前説明や資料、当日のレクチャー

あまりに当日運営に関する事前資料や説明が無かったので、せめて当日の朝に詳細なレクチャーがあると想定していました。 しかし、実際は控え室に案内されてスタッフTシャツを着てフロアに案内されたら、前置き無しにいきなり設営作業に組み込まれました。設営作業も、これから何をするか説明はなく、その場その場でそれらしき人に聞いたり付き従ったりすることしかできません。 「審判と受付のグループ分けは?」「事前のレクチャーは?」、そんなことを聞ける状態でも空気でもなく、ただその場その場で言われたことをするのが精一杯です。

この時点で「朝待たされた挙げ句、説明も情報も無しで主な業務に無い設営作業をさせられている」というネガティブな気持ちが自分には渦巻いていました。 どう考えても開会までの時間は、審判or受付のレクチャーに費やされると思っていたので、唖然としながら机や段ボールを運んでいたのを覚えています。

※設営に関してはあまりに指摘事項が多く、別項を設けます。

軽食ナシ

これはもう「無かった」としか言いようがありません。 自分は、代わりにスタッフ向けでフリーだったRed Bullをガブガブ飲んでました。 振り返るとこの日は、Red Bullとリアルゴールドしか口にしてなかった……。 正直なところ、他の問題点が大きすぎてボランティアでこの件にその場でクレームしていた人は見受けられませんでした。 無いなら無いでイイから、事前の話と違うのはやめて欲しいとしか言いようがありません。

モバイルの利用

ありませんでした。想定できたのは

・審判向けにレクチャーされた上でのCHALLONGE使用 ・受付で選手や使用キャラの変更申請を受けた上でのチーム&選手情報の閲覧 ・LINEやDISCODEなどを使用した情報伝達

でしたが、何の指示も連絡もありませんでした。 審判としてフロアに立っていたボランティアスタッフは、必死に自力で情報収集しながら選手たちの質問にできる範囲で回答していました。

対応策

以上の問題点に対する対応案は以下の通りです。

①作業時間

集合場所を変更したならば、変更前の場所にスタッフを配置するか、貼り紙をするなど配慮すべきです。メールは開封通知を設定していない限り一方通行、ましてや直前の場合は前泊者が見れない場合もあります。また、メール発信時は上司や身内グループにCCを付けて相互確認をするのが安全です。 休憩時間は、時刻は定まらずとも大会進行のどの段階でする予定かくらいは段取りを組んで欲しいです。終わりの見えない労働ほど辛いものはありません。 上がり時間はボランティアの性質上、帰らざるを得ない段階で帰るで良いと思います。しかし、そもそも大会進行の段階に合わせた簡易的なシフトはせめて組んでほしいです。

②作業内容

少なくとも「設営」「撤収」は明記してください。十分に重い仕事です。 「大会審判」「受付作業」、特に審判は、事前資料の送付と、せめて10分でも腰を落ち着けて最低限のレクチャー&質疑応答の時間を。ボランティアゆえにミスは許されるでしょうが、イレギュラー以外の通常業務で何をすればいいか分からないのは本人も選手も辛い思いをするばかりです。 また、審判業務に試合進行の管理が含まれていることは未経験者には分かりにくいので事前に伝えておくべきでしょう。前もって分かっているだけで覚悟の度合いが変わります。

③軽食

無理して用意しないでいいと思います。ボランティア、チャリティーという性質なら、むしろ「用意できないけど差し入れ歓迎、控え室に置いてくれればOK!」などもアリです。

④Tシャツとタオル ⑤選手の大会参加

おおむね問題は無かったと思います。

⑥持ち物

“お持ちであれば”を“できれば”にして、モバイルバッテリーでなくそもそもスマホに。選手からの質問に対して、CHALLONGEやルールを確認するためとしてです。私物に頼るのはボランティアではできる限り避けたいですが、ブラウジングできるモバイル端末レベルなら理解は得られるかと。 “筆記用具”はあやふやなので、メモ帳とボールペンなど。 あと、運営側が用意するクリップボード(プラスチックの板で頭に大きい挟むやつが付いているアレ)が欲しいです。紙ペラ1枚のリーグ勝敗表はあまりに危ういし、クリップボードを持っていると「あの人が審判をしている人」と周りに対してもスタッフ感が出ます。ボランティア間で審判業務を引き継ぐバトンとしての役割も出ます。

⑦当日のレクチャー

お願いなのでやってください。無理ならばせめて事前資料をメール添付で送る、クローズドなwebサイトに記載するなど。

以上、ここまですでに相当長い文章ですが募集要項と実際の内容の違いを挙げただけです。

「何かPS4がアップデートされてなくて大会進行が押したんでしょ?」とだけ思ってた方にとっては、それがどうした感があるかもしれません。

しかし、上記の状況でボランティアのパフォーマンスは著しく低下していました。 これらが改善されるだけで、積もり積もって1~2時間は大会進行が短縮されたでしょう。 そして今回のボランティアをした人達がおそらく体験したネガティブな思いは解消され、次回以降のリピートにつながるでしょう。

トパチャリのボランティアに申し込む人って?

さて、ここまで読んで思うところがある人もいるのではないでしょうか。

「それくらいよくある話だろ」 「何も知らず勉強もせずボランティアとかマジ?」 「指示待ち人間はこれだからダメ」 「それくらい覚悟してボランティア参加したんでしょ?」

まず、よくある話なら、その状態がおかしいです。 自力による学習を前提とするボランティア、もそもそもおかしい。 何の説明も資料も無い状態では、怖くて自らの判断では動けません。 そして、ここまでの仕打ちはさすがに予想してません。それでもボランティアの方々は頭真っ白、体ボロボロになりながら働き続けました。

少し考えてみてください。TOPANGAチャリティーカップは、おそらく日本で最も敷居が低く多数のプレイヤーが参加できるイベントです。 少しでも対象ゲームをプレイしたことがあるなら、チームを募り選手としての参加を選ぶ方が多いでしょう。

そのような状況で、ボランティアとして協力しようと思う人間ってどんな人でしょう。 一つはプレイもしていてボランティアだけでなく選手としても参加する人。素晴らしいと思います。 また、どのジャンルにも無償で協力することを趣味や誇りとする「プロボランティア」の方々もいます。が、それはごく少数のエキスパートなのでボランティアである以上前提にしてはいけません。 そしてもう一つは、プレイヤーではない人。配信を楽しんだり選手のファンだったりする人が「トパチャリなら」と申し込んだ場合です。つまり、ゲームシステムや大会運営に精通していない人たちです。これは推測ですが、半数くらいはこの層だったかと思います。

そう、素人なんです。ズブの、ズブズブの素人。 実際に自分も素人丸出しでした。審判なんてやったことない。CPTで見た様々な配信風景と記事で読んだ知識を総動員し、何より見かねた選手の方々にフォローされまくりました。 そうすると、自然とこんな言葉が浮かんでくるでしょう。

「そこで参加者たちが互いに助け合うのがチャリティーでありFGCなんだよ」

はい、そうなのでしょう。 でも、そういう美辞麗句で済むレベルでは無かったでしょう、今回は。

自分があたふたしっぱなしの中で、いろいろと教えてサポートしてくれたある方がおっしゃっていました。

「TOPANGAチャリティーのボランティアって、リピーターが少ないって聞くんだよね」

実際の真偽は分かりません。 ただ、今までボランティアスタッフがこのような扱いを受けてきたのなら、次にまた協力したいとは思わないでしょう。

プレイヤーでもないのにTOPANGAの趣旨に賛同し、無償でFGCに歩み寄ってきた格ゲーを「見る」側の人間。これって今のSFV、格ゲー、e-sportsを盛り上げてるアーリーアダプター(初期採用層)です。 そんな人たちを無下に切り捨ててしまうのはあまりに勿体ないでしょう? TOPANGAに限らずボランティアを募る格ゲー大会運営の方は、こういった層がいることを強く意識して欲しいと願います。


コメント

  1. と。 より:

    この記事を公開した方はとても偉い方だと思います。理性的な対応で、格ゲー業界の未来に期待しているんだと思う。

    個人的に似た経験をいくつかしたことがあって、結論として、滅びゆくコミュニティは自壊するという内容になります。

    私も格ゲーが大好きです。
    その未熟な感じや、社会的弱者の集まりであるという点、コミュニティの成長を祈っていました。

    本件をはじめ、もう終わりなんだと思います。
    最後の闘劇と同じ光景。

    格ゲーは不名誉なタイトルと共に歴史に幕を閉じる。
    自分たちの選択によって

    • じく じく より:

      コメントありがとうございます。
      おっしゃる通り期待しております。そして自分はプレイヤーではなく、観戦者として観戦文化の成熟を期待しています。
      EVOJ2020は見る限りかなり良い運営のようでしたし、
      できれば終わりと思わず応援していければと思っています。

  2. 今井康浩 より:

    まずボランティアお疲れ様でした。
    業務改善や効率重視という言葉が飛び交う現実世界から解放されたくて大会に参加している選手達が、運営のまずさに目をつぶっている姿を見ているスタッフとしてはさぞお辛かったでしょう。私が昨年ボランティア参加していたなら今年は参加を見送っていた様に思います
    内容につきましては言葉を選びながらGAME愛に満ちあふれた指摘だと私には感じられました。機会がありましたらVF5FSのイベント(EVO Japanが終わったのでBT杯に成ってしまいますが)も見に行かれての文章も読ませて頂きたいです

    最後に大学生時代にプロゴルフ関係の場外運営スタッフとして約2.5年程働いていた過去を思い出させていただきありがとうございました。

    • じく じく より:

      コメントありがとうございます。
      言葉は選んだつもりでしたが、もしネガティブに捉えた方がいるのでしたら残念です。
      今井さんには好意的に感じていただき助かります。
      指摘するからにはその改善案は提示したいと考えていました。

      ビートラには確かに行ってみたいですね。他にも北斗や闘神祭など、SFVに限らず大会を感じることができれば。

      運営スタッフはイベントの対人最前線、その重みを改めて痛感しました。

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