Mリーグファイナルに向けて──これまでのMリーグの意義を振り返る&2/11パブリックビューイングレポート&2/12予選リーグ最終戦感想

Mリーグに至るまでの“コンテンツ”としての麻雀

「THEわれめDEポン」「mondo21杯」「麻雀スリアロチャンネル」「RTD」。竹書房の「近代麻雀」と麻雀最強戦の映像展開。
これらは麻雀を“コンテンツ”として扱ってきた歴史といえます。

もちろん、さらに遡れば1968年~の「11PM」、「麻雀新選組」阿佐田哲也・小島武夫・古川凱章(敬称略)という第一次麻雀ブームがあります。

そしてメディアに取り上げられずとも、連盟・協会・最高位戦・RMU・麻将連合-μ-・101競技連盟など、各プロ団体が公開大会や動画などで発信してきたものもあります。

さらに、「MJ」「麻雀格闘倶楽部」「東風荘」「ロン2」「天鳳」などの対戦プラットフォームも一種のコンテンツと言えるでしょう。

……と、前置きが長くなりましたが、2018年に「Mリーグ」が誕生しました。


これはひとえにCyberAgent(以降「CA」)の藤田晋社長の尽力の賜物で、その上で周囲のプロ団体・メディア・スポンサーの協力があってのこと。
極論すれば藤田氏という麻雀を好む起業家、一個人が生まれなければこの「Mリーグ」は生まれませんでした。

ならば、それは偶然か? と問うと必ずしもそうとも言い切れません。
一つには、藤田氏を育んだ土壌として上記の麻雀を巡る環境が存在した点。
もう一つには、「麻雀を見る」「麻雀で戦う」「麻雀を遊ぶ」文化が、なかなか上手く結び付かずに来た点(もちろん竹書房の存在はありましたが)。
そしてもう一つ、麻雀には“ギャンブル”としての側面がありますが、ここではあえて多くを語らず。

以上を、やや乱暴ですが簡単にまとめれば

「ゲームとしての面白さがあり戦後から根付き続けてきたが、アンダーグラウンドな性質を持つがゆえ広がり切れなかった麻雀。これが藤田氏の尽力で各団体との連携をもって開花しようとしているのが、“Mリーグ”という第二次麻雀ブームである」

と言えるのではないでしょうか。

もちろん、このMリーグがAbemaTVとテレビ朝日というまだ限定されたメディアである点。
キンマwebなどでの絡みは見られますが、これまでの麻雀業界での影響力と比べれば竹書房の存在感がほとんど無い点。
こういった完璧なシナジーとは言い切れない側面もあるとは思いますが、それでも十分な規模と影響力がMリーグにはあると言えるでしょう。

Mリーグへの布石

Mリーグを語るのに絶対必要なのが「RTD」の存在です。
「藤田晋INVITATIONAL RTD」、2016年から始まった文字通り招待制の大会で各団体のトッププロによる年間を通したリーグ戦です。


この配信で確実に麻雀プロの強さと魅力が伝わっていきました。そして、麻雀をコンテンツとして伝えるというノウハウを積み重ねてきたのも間違いありません。
さらにその布石が、藤田氏の2014年麻雀最強戦優勝から始まっていたのでしょう。

RTDは個人戦です。ゆえにプロの個性が垣間見えつつ、実況と解説もプロたちの各団体での活躍やエピソードを交えながらコンテンツとしての魅力が磨かれてきました。

配信や動画をコンテンツとして成り立たせるのに最も重要なのが「実況&解説」であるのは、今さら言うまでもありません。
近年のゲーム実況系の流行はもちろん、そもそもメジャーなスポーツ競技や将棋・囲碁といった世間に認知された頭脳競技でも「プロアマを問わず、競技に精通したプレイヤーでなくても内容を楽しめるように伝える」実況と解説の重要性は分かります。

個人的には、Mリーグに至るまでのRTD、そのRTDの歴史の中でもっともそのコンテンツに貢献したのは実況の小林美沙さんだと思っています。


状況を伝える的確さ、噛み砕いて伝えるライト層への配慮、プロへのリスペクトを持ちつつ時に選手や解説に冗談を仕掛ける機知に富んだスタンス。
間違いなく小林美沙さんは、現状の麻雀実況者でトップと言えるでしょう。

Mリーグのスタート

Mリーグが始まるにあたって、CAの資本力と伝播力はさすがと言えるものでした。
麻雀村に向けた狭いターゲッティングではなく、世間一般に「麻雀は健全で面白い」と面と向かってマーケティングを進めるスタイル。

そして、大和証券・電通・博報堂・テレビ朝日・CA・U-NEXT・KONAMI・セガサミーという協賛企業。
昔から麻雀に馴染みがあり強豪と知られるタレントの萩原聖人のプロ化とリーグ参加。
そして、最高顧問に川渕三郎氏の就任。

正直に言えば……完璧かよ、と。
今の時代に麻雀を広めるのにどう仕掛ければいいか、後に振り返らなければ言い切ることはできませんが、ほぼ最適解で開幕を迎えたと言えるのではないでしょうか。

実際に配信が始まると、番組進行・インフラ・実況・解説に至らない点も多々見られました。
ただ、インターネットや配信を旨とする企業、携わる人々には「修正力」があります。
スピードを問われる世界で恐れずに踏み出す、そこで読み誤ったり間違いがあればすぐに修正する。
RTDでもそうでしたが、Mリーグが進むにつれて確実に改善される姿が見えました。

そして選手たちの変化と成長はもちろん、実況・解説のレベルアップもあったでしょう。
いくつか挙げれば、萩原選手の雀風の適応、松嶋桃さんの実況の成長、各選手の解説方針の変化などがあるでしょうか。

Mリーグの人気上昇

一方、Mリーグに対して一つの疑問が自分にはありました。
それは


「いきなり出てきた企業チームに対して、ファンが思い入れを持つことができるか」
です。

RTDには「魅力的なプロの打牌と個性を追い応援する」という分かりやすい図式が成立していました。
それがドラフトによって選ばれたプロの集合体というチーム戦となって、何をどう応援して楽しめばいいか散漫としないかと危惧していました。

ただ……それは、ある程度麻雀を嗜んで配信もよく見る層である自分の考えすぎだったようです。

ライト層や初見客には、あまり知らないプロ個人より「チーム」という形を与えてあげた方がとっつきやすい。
プロ野球やサッカーなど、日本人には「自分の好きなチーム」を定める文化があり、それを応援するという形式の方がファンも興行側もやりやすい。

その上で、選手個人のスーパープレイや個性に惹かれて、もう一段階深くファンが根付いていく。
こういった「競技が興行として成立して人気を広める手法」が確実に功を奏しているという印象が今のMリーグ終盤を迎えて感じました。

そしてさすがCA、SNSでの拡散戦略も感じられます。
キンマwebなどで、全ての対局を雀力確かなプレイヤー・ライターがレポート。

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対局のTwitter実況、各チームもTwitterアカウントを開設して舞台裏も含めて情報を発信。
そしてウヒョ助(塚脇永久)氏のMリーグ漫画や、ファンたちが率先して選手たちのイラストを投稿したりなど。

注意深く遠くから俯瞰すれば、計算された流れも感じます。
ただ、それがこのMリーグ1年目の短期間で展開されたことを、むしろ賞賛すべきでしょう。

2/11 Mリーグ パブリックビューイング@日の出 TABLOID

さて、先日パブリックビューイング(以降「PV」)に行ってきました。
その模様から、現在のMリーグ人気を感じたのでお伝えできれば。

場所は日の出桟橋近くの施設・TABLOID。2/11はレギュラーシーズンの最終日前日です。

対戦チームは、渋谷ABEMAS/赤坂ドリブンズ/KONAMI麻雀格闘倶楽部/TEAM雷電。
展開的には、

多井選手の4連勝で、ラスさえ引かなければOKの渋谷ABEMAS。
安全圏から急落して下が見えてきた赤坂ドリブンズ。
一時の不振からボーダー圏まで盛り返してきたKONAMI麻雀格闘倶楽部。
大トップ&2連勝しか道がないTEAM雷電。

レギュラーシーズン最終盤ということもあり、明確に目的が見える状況ゆえに盛り上がりもかなりのものでした。

いっしょに騒いで楽しむ

そもそも「パブリックビューイングってどうよ?」って見方があります。
家で配信を見ていれば、自分の環境でゆったりと見ることができる。
それをわざわざチケットを買って出向き、その会場で他人と一緒に映像を見るのが快適なのか? と。

当り前の結論を言ってしまえば人ぞれぞれ、です。

PVにはPVの楽しみがあるのは確かでしょう。
誰かと共に楽しむ、というのが人間の欲求の一つにあるのは間違いない。
そしてPVの特典として、配信では得られない会場のみの裏話的なMCと解説がある。
さらに配信終了後に、対局直後の選手たちのインタビューや談話を聞ける。
そして時間に余裕があれば撮影会などのファンミーティングが開かれる。

こういったメリットと、\4,000-&交通費&時間を天秤にかけてといったところです。

では、場内の様子を少し。

見た目で4チーム各50席で200人ほどの縦長のホール。
壇上に巨大スクリーン、座席の各所にモニターを設置。
物販スペースがホール近くにあり、対局前には入場制限がかかるほどの盛況でした。

物販には選手たちも売り子に立ち、その場で握手やサインなども。
こういった状況は、プロレス興行などにもよく見られる風景です。
プロレスでは物販の売り上げがダイレクトにレスラーの収入となる側面もありますが、立ち上げたばかりであったり、まだまだ人気もこれからの選手や興行にとってはある意味必須ともいえるでしょう。

PV場内に流れる対局映像は基本的に配信と変わりません。
その上で、

・CMはカットして場をつなぐ場内MC&解説
・配信とは2~30秒のラグがあり、事実上の生映像が流れる
・対局中の音声は、試合会場の音声と場内MC&解説で構成(配信実況&解説はカット)
・ワイプで顔が抜かれる可能性アリ

といったところでしょうか。
さすがにCA側もPVゆえの特典と構成に配慮している、という印象でした。

当日のMC&解説は、日向藍子さん、茅森選手、魚谷選手。


3人とも女性プロということもあり、鳴り物を使いながら賑やかなガールズトークが繰り広げられました。
これが小林美沙さんで男子プロだったら、というのも少し聞いてみたいところです。

チーム雷電と萩原選手

この日、特に感じたのがチーム雷電と萩原選手の人気でした。
間違いなく、応援客がもっとも多かったのはチーム雷電です。

ところで正直に言うと……今これを書いてる自分は萩原選手は好きではありません。
癖の抜け切らない仕草や打牌、芝居がかったコメント(当り前ですが)、技術論で語ることが少ない解説、そして例の「雷電の麻雀は……」のシュプレヒコール。

特にシュプレヒコール的に「みんなでこれを言ってみんなで盛り上がろう」という演出は、個人的に白けるし見てて痛々しい。やってる本人もそれに同調している人間も。

ただし。それは個人の好き嫌いの話。

現にこのPV会場では多くの人が、最終戦でチーム最下位が確定的な状況でトップを勝ち取り、正直な心情を吐露するインタビューを聞き入ってました。
そして萩原選手の「雷電の麻雀は……Mリーグは……」のコールにも反応する観客。
TwitterのTLにも萩原選手のインタビューをクリップとしてアップするツイートで埋め尽くされました。

チーム雷電は顔にペインティングしたり、こういったコールを仕掛けたりなど、萩原選手ありきの盛り上げ方をしてきました。
そして、反応を恐れずに継続してアピールし続けてきたということ。

うがった見方をしない場や雰囲気を楽しみたい人たち対してはベストな試みだった、ということでしょう。

試合終了後に選手たちがPV会場に来て、談話の後にファンミーティングが催されます。
握手や撮影会がチームごとに用意されています。

雰囲気的には選手とファンの距離が近くて……という普通の言い方をするよりも、むしろ選手側の方がフランクすぎて驚くくらいという印象。

選手たちのプロ意識が徹底されていて「隙が無いな、これはファンも喜ぶに違いないじゃないか」と素直に感心していました。

2/12 レギュラーシーズン最終日

最後に。
実はこれを書いているのが2/12、レギュラーシーズンの最終日で今も配信を見ていたところです。
アサピン、朝倉選手が気迫のトップで最終戦に望みをつなげたのは見事。

恐ろしいくらいにミスらない、そして最善の選択。
7筒を切っての満貫ツモ、歯を食いしばって流局ギリまで69索を待ってのテンパイ流局。
さすが天鳳位からプロに転向、転向後最初のB1リーグ戦で1位、見事にAリーグへ昇格を決めた実力者だけあります。

最終戦は小林選手の54800点トップ条件がすべての焦点。
しかし各チームのトップクラスが同卓の状況で、この面子相手にそれは厳しい。
親満ツモで光が見えるも多井・近藤選手の上がりで再び遠のき、最後の親番も多井選手の上がりで流れる。

オーラスは小林選手の役満条件となるも、親の勝俣選手の連荘を誘導して極限まで可能性を求める。
しかし、チームの最下位回避を優先した近藤選手の上がりで終了。

結果的にボーダーラインの赤坂ドリブンズが4位維持でファイナル進出となりました。

それぞれの立場がある中での条件戦、というのは見慣れない人には不可思議かもしれません。
最後の近藤選手の勝利者インタビューでも、すべての条件・状況を理解していることが十分に伝わってきました。
誰もが勝負の世界で最善の選択をしているというのを理解してあげて欲しいところです。

U-NEXT Pirates/SEGA SAMMYフェニックス/TEAM雷電の3チームが脱落してしまうのは残念ですが、まだファイナルラウンドは続きます。
今後の激闘や、優勝決定までのコンテンツとしてのMリーグの成長を引き続き見守っていきたい。

特にまだ先になりますが、ファイナル終了から2年目のMリーグドラフトは楽しみです。
内川プロ、金プロ、平賀プロ、木原プロなどMリーグの舞台で活躍を見たいプロも多く、今から楽しみにしています。


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