大須晶 格闘ゲーマー写真展[FIGHTING GAMER COMMUNITY] 紹介& “e-sportsフォトグラファー” 大須晶氏インタビュー @Red Bull Gaming Sphere Tokyo

中野駅南口を出て右手にOIOI。
中野通りの右側を歩いていけば、やがてスギ薬局が見えてそのB1FにRed Bull Gaming Sphere Tokyoがある。

階段を下りていくとゲーム音、マイクアナウンス、ゲーマーたちのガヤ。
その入り口にはウェルカムプレートが飾られていた。

 

 

大須晶 格闘ゲーマー写真展
[FIGHTING GAMER COMMUNITY]
Red Bull Gaming Sphere Tokyo
2019.2.1(Fri) – 2.28(Thu)
10:00 – 23:00

イベント等の受付は左手、そして右手の柱に今回の写真展のメインビジュアルが飾られている。

 

EVO2017優勝後、壇上のときど選手。
今となっては大須晶氏の代表的作品と言ってもいい1枚。
(この写真に関するエピソードは後ほど語ってもらったので、しばしお待ちを)

これら大須晶氏の写真30枚が、Red Bull Gaming Sphere Tokyo(以下、Sphere)の柱や壁面に飾られている。

ただ、氏の写真がフロアの全てと思ってはいけない。
Sphereではさまざまなゲームの大会や野試合が行われており、静寂とした個展会場といった雰囲気ではない。


むしろゲーセン、ビジョン、タコ部屋、氏の経歴で例えるなら「太鼓部屋」のような雑然とした空気。一言で言えば、盛りってる。
それがSphereのスマートさでフィルタリングされ、そこに氏の写真が展示されているのが自然でもあり、特別でもある。

だから、飾らずに気軽に中野まで足を伸ばしてほしい。
もちろん格ゲーマーなら、Sphereのイベントに合わせて行けばプレイを楽しみながら写真も拝める寸法。
そうでない動画勢やライト層、純粋に写真を楽しみたい人も、カウンターでRed Bullを注文して片手で飲みながらゆっくりと写真を楽しめばいいだろう。

 

 

展示写真は、デジタル写真を銀塩方式でプリントした「ラムダプリント」で印刷したスチールと、金属製のプレート(氏曰く“デスプレート”)で構成されている。
デスプレートには、氏が海外格ゲーマーに依頼した英訳も掲載。中にはその英訳が秀逸なものもあるので要チェックだ。

 

写真は、個展タイトルの通り格闘ゲーマーがターゲット。
その一枚一枚から迫力、構図、アイデア、鮮やかさ、そして何よりも格ゲーマーのカッコよさが伝わってくる。

ただ、デスプレートから分かる撮影されたシーン、さらに散歩配信でまちゃぼー氏と解説した配信映像や、氏が在廊している日時に行って直に解説を聞くなどして、その写真にまつわるエピソードやエモ話をインプットした上で楽しむのがオススメ。
(記事終わりにリンク掲載します)

格ゲーマーという人間がターゲットである時点で、十分に写真からエモーションは伝わってくる。
だが、そこにいるのが人間であり戦っているプレイヤーならば、それにまつわるドラマを知ればよりエモーショナルになれるに違いない。

 

“e-sportsフォトグラファー” 大須晶氏インタビュー

さて。
せっかくこんなエキサイティングな写真をラムダプリントの迫力とクォリティで見せてもらって、しかも氏が在廊している。

ならば……氏の話を聞かせてもらえないだろうか?
勇気をもって声をかけてみた。すると……。

「ああん? 貴様も最近のe-sports元年season2で湧いた魑魅魍魎の類か? 誰前と思ってんやこら、コロスゾ?」

とは、言われなかったw(なぜここでヤンキー口調ネタかは、後に紹介する「豪傑の真実」参照)

快く受け入れられ、翌日にインタビューさせてもらったので記していきたい。

 

 

 

Q.今回この個展を開催した経緯をお教えください。

「現在、格闘ゲームは過度に注目されていますが、いわばニッチの世界です。その中で格ゲーマーの写真となればさらにニッチ。その個展に需要があるか、デジタルで十分ではと思っていました。
そこでバーチャ勢の仲間であるマグナムがイベントや個展などの仕事をしていて、ラムダプリントで印刷された写真を見て、大須晶の写真をこれで見たいと。
格ゲーの写真をあえてコストをかけてやるなんて誰もやったことがなくて面白いと推してくれました」

実は氏とのインタビューを整えてくれたのもマグナム氏。
当時命を懸けて切磋琢磨していたバーチャ勢の仲間たちが、かたや写真家となり、かたやイベンターとなってこうして世界初の格闘ゲーマー写真展を開催、というだけでエモい。あったけぇ話じゃねえか……。

 

 

Q.フォトグラファーとなってから今に至るまで、どのようにその技術を磨いてきましたか。座学や誰かに師事したりなどは?

「(座学や師事などは)全く無いです。コンデジで撮っていた時代から撮るのは好きでしたが、全部自己流です。自分が撮られる立場だったからこそ、自分にかけている制約、鉄則は『プレイヤーをカッコ撮る』だけです」

念のため、氏が“撮られる立場”というのは、大須晶はバーチャファイターの強豪プレイヤーであり、大会優勝で得られる特殊称号“豪傑”であったゆえ。
そして職業性ジストニアを患いプレイシーンから退き、フォトグラファーを目指すのだが……これはやはり、後に紹介する映像「豪傑の真実」を見て欲しい。

ともあれ、これはもう氏の写真を評するキーワードなのだが、「プレイヤーであったからこそ撮れる写真」が最大のオリジナリティであり特徴。
その根源には、「格ゲーマーはカッコいい、そのカッコいい写真を撮る」というスタイルがあったということ。
さらに勝手に付け加えるならば、プレイヤー大須晶がカッコよかったからこそ、撮る立場となってカッコよく撮るのは当然、むしろスティグマなのではとも感じた。

 

 

Q.MOV選手が壇上でうなだれている「誰よりも気持ちが溢れ出ていた、表彰台のMOV」という写真が展示されています。これは、この姿がカッコよかったと?

「MOV(氏は“モブ”と呼ぶ)は感情をさらけ出すプレイヤーで、自分も好きなプレイヤーです。EVOは5000人が参加した大会で、そこでの5位はとてつもない結果。もし自分だったら踊りだすほど。でも、MOVは1位だけを取りに来てた。
壇上の誰もが晴れやかな顔でいる中、彼だけが感情を曝け出して悔しがってる。MOVには申し訳なかったかもしれないが、これは本当にカッコよかった。とても気に入ってます。もちろんどの写真も気に入ってますが」

カッコよさが、喜怒哀楽の喜怒楽だけとは限らない。
実物はぜひ現地で見て欲しいが、こういった「哀」の部分、レイニーな写真も十分にエモくてカッコいいということだと。

 

 

Q.大会などの現場では、どのような心構えで動いていますか?

「参加人数が多いほど運ゲーにはなります。でも、ある程度長年撮ってると対戦表などから分かってくることもあります。言うたら適当ですが、第六感みたいなものもあります」

Q.戦略、状況確認、ヒット確認で例えるなら……

「全部ですね。格ゲーで例えるなら『そろそろ飛んでくるな』ってのもあります」

半ば予想し、半ば期待もしていたが、やはり氏の撮影スタイルには格ゲーマーとしてのセンスが土台にあると感じた(合わせてくれたかもしれないが、それはそれで)。
『そろそろ飛んでくるな』は、ジャンプ攻撃をしてくるな、という相手の心理や状況を読んでという意味。
“レバーをカメラに、ボタンをシャッターに持ち替えた”、と言えば安っぽいかもしれないが、大須晶はフォトグラファーとしても格闘ゲームし続けているということだろう。

ちなみに前述した写真を解説している散歩配信内で語られている中での一枚に「EVO2016の再来となったグランドファイナル 2018年8月 EVO2018 ギルティギア部門」がある。

そこでは対戦するまちゃぼーvsおみと、カイvsジョニーのベストシーンを撮るために、自機の15フレーム(秒間4枚)の連写機能には頼らず目押しした、というエピソードも。
正直、これを「写真を舞台にした格闘ゲーム」と言わずにはいられない。

 

 

Q.EVO2017のときど選手の写真に関して「それまでオペレーションもうまく行かず-98点だったのが、この写真で一気に+2兆点になった」とおっしゃっていましたが。

「写真を撮った後に、PCでデータを確認してホワイトバランスやトーンカーブなどを調整する過程のことを、デジタル写真における“現像”と呼んでいます。撮影した写真をまずは4Gamer.netに送った後、現像をしてたんですね。
そうしたらこの写真を見て『ヤバイ……だいぶヤバイ……あまりにもヤバイ』と(笑)。そして、本来こういった写真は同じような構図が多くのカメラマンによって量産されますが、これは他になかったのが良かった」

会場で即座に背景を定め、ときど選手に声をかける。
それに応えてポーズを取ったときど選手。
背景には、ときど選手のテンションが上がっていた故かもしれないが、ここにはバーチャファイター時代から培ってきた、大須晶とときど選手の信頼関係がある。

 

 

Q.この“+2兆点の写真”の以前と以降で、フォトグラファーとして変わったことはありましたか?

「無いです。強いて言えば、この個展を開くことができたくらい。キャッチーという意味であの写真を越えるものは無いんです。個展を開くにあたって、格闘ゲーマーやマニアに対してだけ伝えてもしょうがない。いわゆる動画勢やライト層の方々に対して『光り輝く選手の光り輝いている写真』が必要だったのです」

実際にこの写真は、ときどというプレイヤー、豪鬼というキャラクターを知らなくても十分に伝わる魅力がある。

謙遜されていたかもしれないが、この写真を貼ったtweetは、ご覧の通りのリツイートといいねを数えている。間違いなく氏の知名度を広げた一枚だろう。
その上で、やはりこれは個展会場で是非見て欲しい。

 

 

Q.最近のe-sportsとしての盛り上がりに対し、長年プレイヤーとしてフォトグラファーとして業界に携わってきた大須さんはどう感じていますか?

「(e-sporst元年と毎年繰り返されてきて)今がe-sports元年season2みたいなものですが、自分は……おそらく自分たちは、この過度に注目されている状況に危機感を持っています。
(浮き足立ってはいない?)はい。FPSなど他のゲームと比べれば、格闘ゲームは動いているお金は全然少なく、今は各企業が(格ゲー業界に)投資をしている段階と捉えています」

後乗りしてくる魑魅魍魎に、そう簡単に喰われはせんぞ、と。
ただ、これから格ゲーコミュニティに惹かれて入ってくる人間を弾き返そうとは全然思っていないに違いない。そうでなければ、自分のようなフリーライターの取材など受け入れてもらえなかっただろう。

格ゲーをカルチャーとして育ててきたプレイヤーたちをリスペクトし、彼らを支えたいという気持ち。失礼を承知で言えば、裏方に回ってより広く世界を俯瞰できるようになったからこそ、成長した大須晶が取れるスタンスなのだろう。

 

 

最後に一つ。今回は写真展の記事であり、その内容に留めるつもりだったがどうしても聞きたいことがあった。

 

Q.職業性ジストニアを患われてから、徐々に回復して近年はある程度プレイできるようになったと聞きます。今後、プレイヤーとして、フォトグラファーとしてどのようなバランスを取っていきたいと思っていますか?

「今の状態が心地よいと感じています。やはりゲーマーだからゲームはやりますし。
ただ……万が一、バーチャファイター6が出たら、その時はプレイヤーとして参加するでしょう。その時は、自分が撮るバーチャファイター6の写真だけは減るでしょう」

もう一度、大須晶のガチプレイを見たいというのは贅沢だろうか。
さらに言えば、大須晶が撮る大須晶の最高にカッコイイ写真を見たい、と夢物語さえ思い浮かぶ。
だが、自分たちは氏の“カッコいい”格闘ゲーマー写真をこれからも見られるだけ幸せなのだろう。

 

 

以上、在廊中で多忙な中インタビューに応えてくれた大須晶氏とマグナム氏をはじめとしたスタッフの方には御礼申し上げます。
また、お邪魔したRed Bull Gaming Sphere Tokyoはゲーマーにとってベストプレイス、世界初の格闘ゲーマー写真展にふさわしい場所でした。
(2/2の1周年記念パーティーにタダメシ&レッドブルいただきました、スンマセン)

〆として。
繰り返しになりますが、ラムダプリントの生写真を見るだけでも十分。でも、背景を知ればさらにエモくなること間違いなし。
関連サイト・動画・Twitterを掲載しておきます。

大須晶写真展『FIGHTING GAME COMMUNITY』公式Twitter

特に大須晶氏の在廊日時はこちらをチェック。

大須晶Twitter

氏自身のTwitterです。

大須晶・まちゃぼー「散歩番外編・大須晶写真展」

会場で実際に写真を解説した配信映像。twitchのため、アーカイブは一定期間のみの可能性アリ。

Twitch
Twitch is the world's leading video platform and community for gamers.
ニコニコ動画 こくヌキ王国#76 「豪傑の真実」スペシャル(1/5)

氏の経歴をドラマチックに映像化したドキュメンタリー映像「豪傑の真実」を配信したこくヌキ王国本編。全5編で4/5から有料配信。

ニコニコ動画
「豪傑の真実」ドキュメンタリー映像のみ

こくヌキ王国では分割されていた映像を一編にまとめ、YouTubeにアップされたもの。VTR撮影編集は石井プロです。

 

 

開催期間は2019/2/1~28。第3週には一部写真を入れ替え予定。
さらにクラウドファンディング達成を受け、関西での開催も予定しているとのこと。
さらにさらに、もしかしたら2月末には氏のトークイベントも開催されるかも?
(あくまで上記のTwitch配信で触れられたに過ぎないので、くわしくはTwitterをご確認ください)

以上、格闘ゲーマー写真展[FIGHTING GAMER COMMUNITY] の紹介と、 “e-sportsフォトグラファー”大須晶氏インタビューでした。
是非とも今月中にRed Bull Gaming Sphere Tokyoにご来場ください!

 

 

 

 

 

オマケ:

個人的に一番好きだった写真は、デスプレートに

Oilking:”How do we beat Tokido and Fuudo?”
Gachikun:”I don’t know, but we’ll find a way!!”

とだけ書かれた1枚。
そのセンスや背景、そして現在に至るストーリーが、物書きの自分には最高にエモかった!


コメント

タイトルとURLをコピーしました