COVID-19の影響でオンライン開催となったCPTオンライン2020(以降「CPT2020」)。
従来の世界各国ツアー形式と異なり、各ブロックでのオンライン大会優勝者+αでCapcom Cup 2020(以降「CC2020」)の出場者を決定することとなりました。
※CC2020は2021年春(調整中)に開催予定で、詳細についてはまだ発表されていません。
CC2020出場者の決定方法
まずはCC2020の出場者がどのように決められるかの確認です。
世界を10ブロックに分けたオンライン大会の優勝者:18名
北米-西/北米-東/中米/南米/欧州-西/欧州-東&中東/アジア-東南/アジア-東/オーストラリア/中国、の10ブロックに分けられています。
このうちオーストラリアと中国のみ1回、他ブロックは2回のオンライン大会が開催され、優勝者がCC2020に出場できます。(8ブロック×2名 + 2ブロック×1名 = 18名)
なお、優勝者が他大会の優勝者やCC2019の優勝者(idom選手)の場合、同大会の2位に出場枠が与えられます。
CC2019優勝者:1名
CC2019の優勝者であるidom選手には出場枠が与えられます。
CPT人気選手投票:1名
CC2019出場者32名のうち、すでにCC2020出場枠を獲得している選手以外で人気投票を行い、そのトップ1名が出場枠を獲得します。
投票方法や機関等の詳細についてはまだ発表されていません。
従来との変更点や影響を挙げると、何より「数多くの大会に出場してポイントを稼ぐ」ことができなくなったのが大きいでしょう。
スポンサーや資金力のある選手が世界各地を周り多くの大会に参加してポイントをこつこつ貯めていく方法が取れなくなります。
これは日本人選手には特に影響が大きいことが予想され、CC2019の日本人出場者が15名だったのに対し、CC2020では人気投票を含めて最大3名となります。
これについては様々な考え方ができます。
「世界の各地域に平等に参加枠が与えられた」「プレイ人口や高レベルのプレイヤーが集中する地域への配慮が足りない」「ラグなど環境が平等でないオンラインでの数少ない大会で出場者が決まるのは、必ずしもフェアではない」など、いくらでも公平性に疑問を抱くことはできるでしょう。
しかし、COVID-19の影響下でできる限りCPTを公平に開催する方法を模索した結果であることは理解できます。そもそも、この状況で完璧で公平な大会の開催は無理です。
ならば、それを理解した上で今年の選手たちの活躍を評価し、いずれ訪れるであろう万全の状態でのプレイを期待してCPT2020を楽しませてもらうのが良い、と筆者は考えます。
強いて提案するならば、出場選手枠をもう少し増やして「選手&記者投票枠」が設けられてもいいのではないでしょうか。
MLBのオールスター出場選考など、数多くのスポーツ競技で取られている手法です。
例えば、CPT2019上位100名と信頼のおけるCPTを伝える世界各地のキャスターや記者らの投票によって出場者を選ぶ方法です。
もちろん国の偏りや組織票も危惧されますが、それはすでに決定されているファンによる人気投票でも同様です。
しかし、それよりも技術や見識の高い人間によって、オンライン大会では活躍できなかったがCC2020でのプレイを見たい選手を選び出す、というのも有意義ではないでしょうか。
CPT2020のスケジュール
6月~11月にかけて開催されるオンライン大会は以下の通りです。アルファベットはブロック名となります。
6/20-21 北米-東(B)
6/27-28 アジア-東南(G)
7/4-5 南米(D)
7/18-19 欧州-西(E)
7/25-26 アジア-東(H)
8/1-2 中米(C)
8/15-16 北米-西(A)
—–以降、各ブロック2回目—–
8/29-30 北米-東(B)
9/12-13 欧州-東&中東(F)
9/19-20 アジア-東南(G)
9/26-27 南米(D)
10/10-11 欧州-西(E)
10/17-18 中米(C)
10/24-25 アジア-東(H)
11/7-8 中国(J) ※1回のみ
11/14-15 オーストラリア(I) ※1回のみ
11/21-22 北米-西
前述しましたが、中国&オーストラリアのみ1回だけ、その他のブロックは2回開催されます。
なお、日本はアジア-東に含まれており、同ブロックには韓国/台湾/香港が含まれています。
地図と距離で見るブロック区別
ブロックは以下の国&州で分けられています。
なお、地図は白地図をもとに筆者が独自に作成したものです。
北米-西と北米-東はアメリカ&カナダの州によって区分されているため、世界地図でなく北米単独の地図を記載します。
北米-西(A)
(アメリカ)
アラスカ、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、ハワイ、アイダホ、モンタナ、ネバダ、ニューメキシコ、ノースダコタ、サウスダコタ、テキサス、ユタ、ワシントン、ワイオミング、オレゴン、カンザス、ネブラスカ、オクラホマ
(カナダ)
ブリティッシュコロンビア、アルバータ、サスカチュワン、マニトバ、ユーコン、ノースウエストテリトリー、ヌナブト
アメリカ&カナダの州名で言われても極東の島国に住む我々には分かりませんが、地図で見るとザックリと切ってるのが分かります。
範囲だけで言えば最大10000kmレベルですが、実質的にはアメリカ西海岸と北はカナダ南部4州くらいに収まり、最大5000kmの範囲といえるでしょう。
北米-東(B)
(アメリカ)
アラバマ、アーカンソー、コネチカット、デラウェア、コロンビア特別区、フロリダ、ジョージア、イリノイ、インディアナ、アイオワ、ケンタッキー、ルイジアナ、ミシガン、ミネソタ、ミシシッピ、ミズーリ、オハイオ、テネシー、メイン、メリーランド、マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨーク、ノースカロライナ、ペンシルベニア、ロードアイランド、サウスカロライナ、バーモント、バージニア、ウェストバージニア、ウィスコンシン
(カナダ)
オンタリオ、ケベック、ニューブランズウィック、プリンスエドワード島、ノバスコシア、ニューファンドランド、ラブラドール
東海岸でニューヨークなどを含み、こちらも最大5000kmくらいとなります。
中米(C)
メキシコ、ホンジュラス、ニカラグア、グアテマラ、パナマ共和国、エルサルバドル、コスタリカ、バハマ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、キューバ、ジャマイカ
昨年、日本勢が大遠征をしたドミニカ共和国などを含むブロックです。
ここも東西の範囲が広くメキシコの西岸からドミニカ共和国の東岸までだと5000kmくらいになります。
南米(D)
アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、パラグアイ、ベネズエラ、ペルー、ウルグアイ
南米大陸の南北で端から端までですと9000kmくらい……日本のざっくりした長さで言えば稚内~鹿児島で1800kmくらいでおよそ5倍です。
CPTに限らずあらゆるジャンルで“南米”は一括りにされてきたでしょうが、現地の人々はこの距離感を日常として生きてきたと考えると尊敬に値します。
欧州-西(E)
スイス、オランダ、ベルギー、イギリス、スロベニア、アイルランド、ドイツ、オーストリア、スペイン、ポルトガル、ルクセンブルク、フランス、イタリア
主要ヨーロッパ諸国を含んだ地域で、イギリスの北端とイタリアの南端を最大範囲として4500kmほどです。まだ他のブロックと比較すれば穏便な範囲と言えるのではないでしょうか。
欧州-東&中東(F)
(欧州-東)
デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、ラトビア、ブルガリア、チェコ共和国、フィンランド、ルーマニア、リトアニア、スロバキア、ハンガリー、ポーランド、ロシア、エストニア、トルコ、ウクライナ、ギリシャ
(中東)
アラブ首長国連邦、サウジアラビア、クウェート、オマーン、カタール、バーレーン、イラン、パレスチナ、シリア、ヨルダン、レバノン、トルコ
ロシアを含めるととんでもない範囲になるので、それ以外で考えましょう。
それでもノルウェーの北端とオマーンの南端で10000kmの距離があります。
現実レベルとして、ノルウェー(仮にオスロ)のPhenom選手とアラブ首長国連邦のBigBird選手が戦うとして、その距離でも約8000km近く離れています。
アジア-東南(G)
インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
最大範囲で5500kmですが、実質的にはシンガポールやマレーシア圏内に収まるとすれば3000kmほどに範囲は収まるでしょう。
アジア-東(H)
台湾、香港、日本、韓国
台湾の西にある小さい赤い点が香港です。
最大範囲で根室から香港の距離が3700kmとなります。
またご存知の方も多いでしょうが、日本国内同士よりも韓国の方が近い日本の地域が多いことも地図で実感できます。
中国(I)
一国だけでブロックとされた中国、東西の最大範囲で6500kmくらいです。
この広さを考えると、1国だけでただし開催は1回のみというのもうなずけます。
オーストラリア(J)
中国と同じく一国のみです。およそ4500kmの範囲に収まります。
他のブロックと比較すればアジア-東南と一括りにされてもおかしく無さそうでしたが、今回は1国1開催となりました。
距離が生み出す避けようのない「ラグ」
さて、ここまでブロック分けとその地域を地図で実感してもらいつつ、距離なども記載しました。
距離を挙げた理由は、ゲームをするプレイヤー、特に格ゲープレイヤーなら気にする「ラグ」の問題です。さすがに専門外なので簡単に述べますが、ラグの原因を挙げると、
・伝送遅延(通信する帯域の太さと通信量の大きさ次第)
・伝搬遅延(距離による物理的な時間)
・輻輳(ふくそう)遅延(回線の混雑によるバッファや破棄)
これらの要素があります。
近いからラグが少ない、遠いからラグが大きい、とも限らないのは上記の「伝搬遅延」以外にも遅くなる要素が存在するからです。
しかし、見方を変えれば伝搬遅延以外の要素は、PC or ゲーム機やネットワーク環境を改善することで軽減できます。一方、避けようのない距離による伝搬遅延は改善のしようがありません。
以下、少し乱暴ですが計算をします。
一般的に光ファイバーの速度は約20万km/秒と言われています。
今回のCPT2020でおおよそブロックごとの最大範囲は5000kmです。
北米で言えばロサンゼルス~ニューヨーク間くらいの距離です。
5000kmだと往復の送受信で「5000km÷20万km×2(送受信分)」で0.05秒かかります。
格ゲーの世界では1秒=60フレーム、1フレームは0.017秒です。
そうすると0.05秒は約3フレームとなります。
格ゲープレイヤーにとって、常に3フレームのラグがあるというのは受け入れがたい状況と言えるでしょう。
これが東京~大阪間だと約500kmとして遅延は0.005秒、遅延は0.3フレームほどです。
ざっくり言えば「1フレーム=1700km」となります。
もちろん実際は上記の通りの通信速度とは限りませんが、オンラインでゲームをプレイするということは、こういった避けようのない遅延と向き合うことを意味するのです。
オンライン大会に向き合う選手達
間もなく欧州-東&中東ブロックからCPT2020はスタートしますが、前述のようにBigBird選手やAngryBird選手のいるアラブ首長国連邦から欧州-東諸国まで約5000km、北欧諸国なら約7000km離れています。
それらを考慮して観戦者である我々は彼らのプレイを見守るべきではないでしょうか。
ラグを前提としたプレイスタイルも出るかもしれません。
また、今後の情勢次第で海外渡航や遠距離移動が許されるようになれば、オンライン大会でありながら距離の短縮やより良い通信環境の確保のためだけの遠征もあり得ます。
そこまででなくても「自宅の回線が弱いので、友人の家から大会参加」という話ならばすでに国内オンライン大会でも聞かれる話でもあります。
ちなみにLOLやPUBGは、同じように欧州/北米/アジアなどにエリアを分けてオンライン大会を開催していますが、
・ラグの影響は当然あるが、格ゲーよりはプレイへの影響はシビアではない
・参加選手のプレイの様子や試合後のインタビューなどを、選手側が用意したwebカメラ等で映して配信している
ことから、現状でのオンライン大会の開催は比較的受け入れやすくなっていると言えます。(MOBAやFPSにはラグの影響はない、と言っているのでは決してありません)
もちろん、オフラインで選手たちがプレイを競い合い、観衆や視聴者のいる中での選手たちのパフォーマンスを楽しみ、その高度なプレイとプレイヤーに賞賛を送ることができるのがベストです。
しかし、それが叶わない状況ならば、その環境を理解して観戦を楽しんでいけばよい。
それがCPT2020、広げれば各ゲームのオンライン大会に対するより良きスタンスと言えるでしょう。
CPT2020の視聴&開催情報
CPT2020は日本国内で、YouTube/Twitch/Mildomで配信されます。
CAPCOM Pro Tour Online 2020 国内中継ポータルサイト
初回の欧州-東&中東大会は、
6/15(月)0:40~:TOP8→決勝
で配信予定です。
選手達のプレイだけでなく、どのような形で配信コンテンツとして工夫されていくのかも楽しみです。
(了)
北アメリカ白地図使用元:ZenTech
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