前編では自分が好むジャンルをミーハー的に追いかけましたが、後編は「STEAM DECK」と「インディーゲーム&スクール」の2点に絞ってお送りします。
個人的な№1ブースはSTEAM DECK
STEAM DECKはSteamが2022年後半にアジア圏向けに出荷予定の小型ゲームPC。まあどんな物かとかスペックとかはwebにいくらでも転がってるのでそちらをご覧ください。
それよりも、今回の会場内ブースとして一番印象深かったのでピックアップ。お金のかけ方ならKONAMIの横長巨大ビルボードサイネージなのだけど、アイデアでこっちに軍配です。
囲われたラウンジスペース
ブースは出入り自由ではなく、囲われたスペースがラウンジのようになっています。これは展示会イベントで設けられるVIPや関係者向けスペースに似ていますね。通路側から見て「ああ、何かゆっくりできそうで良さそう」とちょっと羨ましくなる感じです。
入場はアトラクションっぽいシステム
入場待機列はブース裏手にあり、通路やブースからは隠れています。そこから推定50人くらいの単位で入場者がゲートでノベルティを受け取ります。
そこからブース内に入って試遊開始……と思ったら、まずは中央スペースに導かれます。すると単なるビジョンくらいに思っていた頭上にあったスクリーンで、紹介や操作説明などブリーフィングムービーが流れ始めるんです。アレです、テーマパークのアトラクション、例えばTDLのホーンテッドマンションの導入部分のような感じです。
STEAM DECKを手に取ってラウンジへ
ブリーフィングが終了するとラウンジへ……の前にも一ネタあり。外から見ると「単なる展示品かな?」と思っていた棚が、なんと実際に試遊するSTEAM DECKが収められています。入場者ひとりひとりがこれを手に取ってラウンジスペースに散っていくシステムでした。
あとは好きな場所でゆっくり15分間プレイを楽しむだけ。自分は何となく『ACE COMBAT 7』をプレイしましたが、何の違和感もなくヌルヌル動いてました。まあ試遊の中身はここでは置いておきます。
史上最適の携帯ゲーム試遊環境(俺的にね)
ポイントとしては、「アトラクションタイプのブース設計」と「携帯機を実際に手に取って持ち歩かせるシステム」です。アトラクション的演出についてはすでに述べましたが、後者のシステムも地味に効いています。
ゲームの試遊展示はデスク等に固定され、携帯機でもチェーンなどで固定して盗難を防ぐのが普通です。これを緩やかな雰囲気に見せながらブースをクローズドスペースにして、携帯機のメリットを体感させるように持ち歩かせて終了時には回収しているのです。
COVID-19の影響もあってプレゼンテーションの機会がオンラインが主流になった中、久しぶりのオフラインイベントで体験することの価値をしっかりと用意したSTEAM DECKのブースは俺的史上最適な試遊環境でした。
インディーゲーム&スクール系が面白い
長年ゲーム会社に勤めてTGSには何度も行きましたが、正直言えばそれまではインディーゲームやスクール系はあまり見て回らなかったんです。
が、最近ゲームメーカーズというゲームクリエイター向けwebメディアで「東京ゲームダンジョン」というインディーゲーム展示会の取材レポート記事を書かせていただいたんですね。
そうしたら、インディー独自の面白さや熱意が今になって分かってしまい気になって仕方なくなってしまいました。
マンガ同人誌の即売会は昔から馴染みがあったのですが、ゲーム作りの世界でインディー分野がここまで伸びてるとは恥ずかしながら気づいていませんでした。
ゲームを作るのって、個人やアマチュアにとってはハードルが高かったはずなんですよ。
それが、Unreal Engine/Unity/Cocos2d-x/Blender/Metasequoia/Tinkercadなどの無料のエンジンやツール、Steamや各プラットフォームのインディーカテゴリの拡大、企業や団体のゲームクリエイター向け援助プログラムなど……自分が気付かないうちに世界は広がっていました。
専門学校や大学などのスクール系も、以前より数も規模も大きくなっています。これはもう、ゲームに対する世間の理解度が高まった結果でしょう。今回のTGSでは、「これ本当に専門学校!?」という感じのブースが多々見受けられました。
ということで、前置きが長くなりましたが気になって訪問したいくつかのインディー&スクール系をご紹介。特に前半はTGSならではの国際色も推していきます。
速攻退職 (YOHCAN)
気軽に声をおかけしたら、台湾からの出展ということでカタコト英語やスマホ翻訳で何とかコミュニケーションさせていただきました。
カットデザイン的なキャラクターが特徴的な横スクロールアクションゲームで、なかなか心地よい動きで翻訳もしっかりしています。Bボタンによるフィニッシュムーブを積極的に使えるようになると、自分が上手くなっているのを実感して楽しくなってきます。
Koa: A Gluttonous Wizard (Fiery Squirrel)
▲Koa: A Gluttonous Wizard (Fiery Squirrel)
操作はカーソルキー4つとスペースキーだけ。避ける、踏むなどのシンプルなアクションなのですが、少しずつギミックが増えて難易度が上がってきます。そして「上に配置されているけど押すべきなのは▼」など、プレイヤーの認識を狂わせてくるシステムが面白いところ。
これがさらに進行がスムーズになり、レベルデザインの一つに「操作は簡単だけどスピードが求められる」などがあったらもっと面白くなると感じられました。
そして出展されている方は、何とベネズエラから日本に来てゲーム制作をされているとのこと。流ちょうな日本語を話されて驚くだけでなく、かわいいノベルティも用意する力の入れ方に敬服するばかりでした。
Rocket Rumble (PixcelNAUTS Games)
▲Rocket Rumble (PixcelNAUTS Games)
ナイアガラの中心にあるカナダの開発会社です!(TGS公式より)とのことで、実際にブースにいた方も陽気にアテンドしてくれました。タイトルからも分かりやすくロケット的な乗り物でランブルな感じ(語彙力)。
レース形式の縦スクロール最大4人同時プレイで、各チェックポイントごとに順位に応じてポイントを獲得、制限時間終了時のポイントで最終順位が決定します。
マリオカート的な面白さが根本にありつつ、よりシンプルに激しく楽しめるようなゲーム性が感じられるパーティーゲームです。
Western Dual Wield
見た瞬間「あ、ガンスモークだ!」と身もふたもない第一印象から気になりました(ゴメンナサイ)。
実際にプレイすると、移動も射撃角度も360度と自由度の高さにビックリ。そしてスクロールも縦横の両方があります。操作に慣れてくると敵を上手いこと倒す気持ちよさが出てきます。
ゲームバランスとしては、雑魚敵の弾が遅いのが上手く難易度を下げているな、と。後にマシンガン系やナイフ飛びかかり系の敵も出てくるのですが、そこはオブジェクトによるブロックやローリング回避など次のステップが求められる感じです。
話をお聞きしたら、マインクラフト的ボックスデザインは製作上の効率性を考えられてのこと。以前の試遊を受けてチュートリアルも充実させているとのことです。
In His Time (講談社ゲームクリエイターズラボ)
▲In His Time (講談社ゲームクリエイターズラボ)
2020年9月に始動した講談社ゲームクリエイターズラボの2期生、Yonaさんの作品で2023年夏リリース予定です。謎解き2Dアドベンチャーゲームで、すこしダークですこしカワイイ独特なグラフィックやキャラクターデザインに魅了されます。
プレイした印象としては、謎解きに対するヒント提示をテキストなどを使った過度なものにせず、この世界観の中でプレイすることで自然と解き明かせるようにしている工夫が感じられました。
奇々怪々 黒マントの謎 (ナツメアタリ)
あのTAITOの『奇々怪々』です。小夜ちゃんです。TAITOから公式ライセンスを受けてナツメアタリ株式会社からリリースされています。
ゲームとしては過去の「お札を投げてお祓いでも攻撃できて一発死」から「攻撃のバリエーションが増えてライフ制、2人協力プレイ対応」と正統進化を遂げた感じです。
かわいいながらも地味に難易度が高かったアーケード文化の時代に作られた旧作も味がありましたが、こうして家庭用として味付けされた続編も気軽に楽しめて嬉しいところです。
くちなしアンプル (CAVYHOUSE)
ミステリー的なストーリーが含まれた「ダンジョン農地化ローグライト」ゲームです。出展者のCAVYHOUSEさんは2010年に活動を開始された同人/インディーゲーム制作サークルで、メンバー2人で活動されているそうです。
いわゆるローグライクなのですが、プレイを重ねることでキャラクターだけでなく「ダンジョンが成長する」というのが面白そうなところ。コツコツ気持ちよくプレイすることを優先させた感じの難易度もイイ感じです。
そして、一部をあえて透過させている独特のキャラクターデザインや、そのキャラクターたちによるストーリーをフルボイスで楽しめるというのも完成度が高く好感を持てます。
SLIMIX (新潟コンピュータ専門学校)
スライムを操作してダンジョンの中を進んでいくアクションゲームです。自分の体を伸ばして進む基本操作に加えて、トゲを飛ばしたり硬化したり電撃を放ったりなどスライムを変身させてギミックをクリアしていきます。このSLIMIX以外にも多数の作品がプレイアブルで出展されていました。
今回、新潟コンピュータ専門学校は地元の新潟農業・バイオ専門学校とコラボして、何とノベルティに本物のお米が! しかもパッケージも工夫されて愛情にあふれており、TGS2022のベストノベルティ賞はこれで決まりでしょう。
クラーク記念国際高等学校 クラークネクスト東京
通路を歩いていると、眼下に一体のかわいいロボットが。「なるほど、こういうロボコン的なものも作っているのか」と写真を撮らせてもらっていたら……「こいつ、飛ぶぞ!(バク転)」
実はブースの一画で学生の方がコントローラで操作をしており、呑気に写真を撮っている筆者をサプライズさせるべく〆にバク転を決めて見せました。
クラークネクスト東京には「eスポーツコース」「ゲーム・アプリコース」「ロボティクスコース」の3コースがあり、今回のTGS2022では社会実装教育の一環としてそれぞれの分野で準備・出展を行ったそうです。今回のロボットは既製品を3Dプリンタなどを駆使してカスタマイズし、「ROBO-ONE Light」などの二足歩行ロボット格闘競技大会に出場しているとのこと。自分を驚かせるために陰でコントローラーを操作していたのも単なるサプライズではなく、大会で用いるテクニックの一つだそうです。
ざっくり総括&オマケ
入場者数はこの記事を書いている時点で発表されていませんが、3年ぶりオフライン開催への期待感も込めた熱気を感じました(さらに最終日は雨天も合わさって湿気もすごかったかもw)。
その中で自分としては体感できる「ここだけ」にフォーカスして回ってきた感じです。そしてビジネスデイの2日間だけでしたが、TGSは戦いです。常に歩き回り周囲に気を配り続けるので、体はボロボロになりました。無限に体力と時間があれば、すべてをチェックしたかったくらいです。
では最後に、パネル展示されていた「ゲーム歴史博物館」をお見せして終わりにします。
興味のある方は画像を拡大してご覧ください。
前編はこちら
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