2019/1/6 第17回クーペレーションカップ(浅草橋ヒューリックホール)から、1588日。
2019/3/23 The17th VFR BEAT-TRIBE CUP(有明TFTホール)から、1513日。
共に4年以上の歳月を耐え忍び、ついに2023/5/13にクーペレーションカップ(以下、クーペ)、5/14にBEAT-TRIBE CUP(以下、ビートラ)が幕張メッセで復活した。
今回、メディアではなく個人ながら許可をいただき、クーペ&ビートラ2日間の模様を取材させてもらった。
筆者は浅瀬チャプチャプの観戦勢なのでプレイ技術などは深く触れず(というか触れられないし触れてあっさいこと書いても失礼)、現場の模様を中心にレポートしていきたい。もし内容に誤りがあればご容赦、指摘も喜んで修正させていただく。
イベント概要
レポートの前にクーペやビートラ、そして開催の舞台となったDreamHack JAPAN 2023について簡単に説明したい。
クーペは1999/5/12稼働開始の「ストリートファイターIII 3rd STRIKE -Fight for the Future-」(以下、3rd)、ビートラは2010/7/29稼働開始の「Virtua Fighter5 Final Showdown」(以下、VF5FS)を舞台に5対5のチームバトルで頂点を目指すゲーム大会だ。
▲3rd、VF5FSのゲーム画面。ともに当日の配信ではチーム名や選手などのオーバレイ、アスペクト比に合わせた画面レイアウトなど工夫されていた。
共にゲームセンターとプレイヤーたちが主体となって運営してきたコミュニティイベントであり、クーペは2001年、ビートラは2000年(※)から開催され続けている存在自体がレジェンドとも呼べるイベントである。
※ビートラの前身であるアテナ杯は1994年より開催。アテナ杯から直近のビートラにかけてVirtua Fighter2~Virtua Fighter5 Final Showdownとバーチャファイターシリーズを戦いの舞台としている。
今回のイベントとしての位置づけは、2023/5/13~14にかけて幕張メッセ国際展示場9-11ホール/イベントホールで開催されたDreamHack JAPAN 2023内のACTIVITIESカテゴリで開催となっている。
DreamHackはスウェーデン・アメリカ・スペイン・ドイツ・オーストラリア・インドなど世界各地で開催されているエンタテイメント・フェスで、ゲーム・BYOC(※)・ライブなどをあつかう複合型フェスティバル。
DreamHackでは格ゲーに特化したDreamHack Fightersというコンテンツを世界的に展開しており、今回はこの2大会がDHFightersに来たという位置付けだ。
そして、東アジア初&日本初上陸として開催されたのが、今回のDreamHack JAPAN 2023となる。
※Bring Your Own Computer、自分のPCやゲーム機などを会場に持ち寄り自由なスタイルで楽しむ。日本では「C4 LAN」などがなじみ深いスタイル。
これは筆者の推測だが、DreamHackは日本初開催にあたってさまざまなコンテンツを検討したはず。
その中で闘劇を始めとして日本の格闘ゲームシーンを支え続けてきた松田泰明氏を代表とする株式会社ユニバーサルグラビティーの活動を、DreamHackが評価した結果と言えるのではないだろうか。
会場の様子
ビートラ&クーペは、開催2日間にかけて9-11ホールの「ARCADE GAME &DH FIGHTERS」スペース内で開催された。
▲クーペ決勝トーナメント時の様子。手前からホール奥にかけて俯瞰しても、この空間だけ圧倒的に人口密度が高い。
とにかくホール内でクーペ&ビートラ会場だけ異様なまでに人が多いのが印象的で、格ゲー風に言えばまさに「盛りってる」状況だった。
事前登録でクーペが85チーム、ビートラが125チーム。5on5のチーム戦なので、単純に選手だけでもそれぞれ500人前後が参加している。
そこに選手たちの家族や友人、観戦客なども加わり、予選などはターン制で行われたが常に立すいの余地もない空間となっていた。
レイアウトについて触れると、ステージと大型ビジョンがあり、その前のフロアにゲーム筐体がスペースを空けて設置されている。
これはクーペ&ビートラ共通のスタンダードな配置だろう。
▲ステージに1セット、決勝トーナメントはもちろん予選・PLAY OFF・WILD CARD時にも使用された。
▲フロアに設置された筐体を選手たちと多くのギャラリーが取り囲む。
そしてクーペ&ビートラが2日連続開催ということもあり、1日目には3rd&VF5FS筐体、2日目はVF5FS筐体のみが並べられていた。
これは搬入と撤収の効率化、2日目の来場者数やイベント進行を考慮してのことだろう。
▲1日目にあえてVF5FS用のLINDBERGH筐体も設置しておく工夫。3rd用にはBLAST CITYとnew VERSUS CITY筐体が使用されていた。
▲大会特有で参加者にいつも望まれる野試合台もイベント進行が許す限り用意されていた。
さらに設置された筐体のうちステージを含んだ複数セットが配信台、つまりゲーム画面出力を配信に直接取り込むセッティングがされていた。
同時進行の試合がスイッチングして配信され、時には配信台ではない場所での試合もハンディカメラで直撮りして追いかけるきめ細やかさもあった。
▲常に会場の試合を追い、選手たちの姿や配信台外のゲーム画面も撮影していたスタッフによるハンディカメラ。
なお本大会に用いられた筐体は、主催元のGAME NEWTONからだけでなくビデオゲームミュージアム ロボット(埼玉県深谷市)、ゲームハウスアトム(愛知県名古屋市)から提供されたこともお伝えしておきたい。
ゲーム大会用アーケード筐体の準備は、店舗からの筐体の搬入・搬出は大変であると同時に、本来かき入れ時である期間にインカムを稼げないというジレンマがあると主催の松田氏は言う。
だからこそ上記のような協力してくれるゲームセンターに対して日頃のインカムで応え、それ以外でもビデオゲームを設置している地元のゲームセンターをプレイヤーが通い、支えることが大切なのだろう。
5人であること、チームであること。
以降は筆者の思い込みが強くなるので、「こいつ何ポエムってんだ」と思われるかもしれないがどうかご勘弁を。
ここまでイベントの位置づけや会場の様子をお伝えしたが、クーペ&ビートラの本質は5on5のチーム戦にある。
▲チームメンバーの戦いを仲間たちが見守り、ときに声援を送る姿が各筐体にあった。
ゲーム自体は1対1で行われる格闘ゲームだが、キャラクターやステージの相性(※)があり勝ち抜き戦ゆえの「最初に誰が行く?」「負けたら次に誰を被せる?」などの駆け引きが存在する。
※クーペ&ビートラでは1戦ごとに負けた方が次に戦うプレイヤー(=登録済みのキャラクター)を選び、ビートラではさらにステージも選べる(VF5FSではステージに広さ・壁・RING OUTの有無などの違いがある)。
▲次に誰が行くか? 先の展開も予測して相談するシーンもチーム戦の醍醐味。
ただ、以上はチーム戦の戦略的な面を挙げたに過ぎない。
チーム戦の駆け引きが戦略ならば、個々の選手の技量は戦術と言える。
そしてこういった戦略や戦術を支えるのが、モチベーション・気持ち・雰囲気・流れといった無形のメンタル要素だろう。
▲仲間の戦いを見守り、ときに熱く鼓舞する。
勝利時に喝采を挙げ、肩に手をかけたり抱き着いたりする盛り上がり
1ラウンド取られた時の「あるよ、あるよ!」というフォロー
連続するコンボに「アイ、アイアイ!」と合わせて勢いづける掛け声
負けても個人を責めず次へと切り替えるメンバーへの配慮と勝利への執念
フィジカルスポーツのチーム戦ならばよく聞かれる「声出していこう!」という掛け声も挙がる。
それは慣れないと違和感のある光景かもしれないが、当事者の選手たちにとっては何も不思議なことではないだろう。
▲過酷な狭き門であるWILD CARDを勝利した瞬間。代表である大将にすべてを託したチームの感情が爆発する。
重圧の中でも最適な選択を取れるか。
仲間たちの期待を集中力に変えて注ぎ込めるか。
緊張がコンボをミスらせないか。
リラックスしてプレイに臨めるか。
ベストのパフォーマンスを出せるのか。
ましてや1フレーム(1/60秒)の差で勝敗が決する格闘ゲームの世界ならば、読みなどの対人要素も含めてメンタルの与える影響は計り知れない。
互いに支え合い、ひとりひとりの力を引き上げてチームとしての勝利を目指す。
ここにいる者たちはその重要さが分かっているから、会場から挙がる声は絶えない。
▲背中には戦いを見守り支えてくれる仲間たちがいる。
クーペ&ビートラへの想い
両大会には盾や賞品こそあれ、昨今のesports大会に見られるような多額の賞金はない。
勝利で得られるのは名誉のみと言っても過言ではない。
▲優勝・準優勝チームには盾やメダルなどが贈呈された。
それでも選手たちは早くて年に1回開催されるこの大会に向けて腕を磨く。
3rdならば地元のゲーセン、VF5FSならばゲーセンのみでなくVirtua Fighter esports(※)でプレイを重ねる。
それだけでも大会への想いは膨らんでいく。
※略称:VFes。2021/6/1にPS4でリリースされゲームセンターでも稼働中。11年近い時を経てVF5FSをベースにリメイクされ、同時にesportsシーンも展開されプロ選手も誕生している。
▲プレイヤーの「主張」が激しいのもバーチャ勢ならでは、か。
そして大会に参加する選手たちのほとんどは、日ごろはゲーム以外で生計を立てる一般人だ。
ましてや大会の歴史の長さは、選手たちがゲームと共に歩んできた人生の長さでもある。
もちろん一人ひとり歩んできた人生は異なるが、受験・就職・結婚・出産といった人生のイベントを重ね、仕事や学業がある中の限られた時間でゲームと向き合う。
それは決して簡単なことではない。
だが、それは同時に大会が同志との再会の場となる「同窓会」としての意義も生み出す。
好きなゲームで共に戦える仲間たちがいる、自分がひとりではない、と実感できる場なのだ。
そして戦う相手がいるからこそ対戦ができる、というゲームの根本がある。
▲同志たちとの再会は嬉しいもの、VF女史部の方々の姿も。
想いは自分だけでなく仲間たちにも及ぶ。
「奴と一緒に大会の舞台に立ちたい」
「頑張ってきた仲間を壇上に立たせたい」
「このチームメンバーで赤絨毯を踏みたい」
これらは団体競技ならではのモチベーションだろう。
ただ、長年積み重ねられた大会やゲームセンター文化、ゲームと共に歩み続けてきた人生が言葉に重みを与える。
ましてやコロナ禍で大会開催もかなわず、中小ゲームセンターの閉店も相次ぐ厳しい状況からの4年ぶりの開催となれば、クーペ&ビートラへの想いの深さは筆舌に尽くしがたい。
大会シーンピックアップ
ここまでクーペ&ビートラの背景や魅力を伝えるべく堅いノリになってしまったが、ここからは現場のシーンをピックアップしていこう。
▲隣のブースからのライトがゲーム画面にかかる予期せぬ事態も複合イベントならでは。そこで試合を見守るメンバーが上着で光を遮るというオフ大会ならではのチームプレイ。
▲クーペのベスト8&ビートラのベスト16が、決勝トーナメント開始前に入場セレモニーで「赤絨毯を歩く」栄誉が与えられる。
▲赤絨毯入場の様子は配信アーカイブで楽しめるので、ここではそれ以外のシーンを。なお、客席が設置されているのがクーペ、パーテーションのみがビートラでそれぞれの「色」の違いもあって面白い。
▲ステージ上での試合自体は決勝以外でも行われるが、決勝2チームが会場全体の注目を浴びて雌雄を決する場はまさに「壇上」と言えるだろう。
▲試合勝利の喜びの流れから➡P+G的な何かでチームメンバーをK.O.(その後、倒れた方も無事応援に復帰されました)。
▲試合に臨む姿も選手の個性が出る。ただ、どの選手も画面に向けられる眼光は鋭い。
▲VF5FS稼働開始から13年の月日を、このLINDBERGHのインストから感じる。
▲配信の実況解説席には、関係者や試合の合間を縫って参加選手たちが登場。決勝トーナメントの壇上ではクーペ挨拶にスタッフのたいへー氏、MCのコーリー氏やセクシー斎藤氏、イベント主催の松田氏や山岸氏がマイクを持った。
▲イベントを支えるスタッフたち。ここに写っていない中でも多くのクルーたちが休みなく動き回っていた。
▲クーペ決勝トーナメント前の客席設営の様子。案内アナウンスと共に観客がパーッと掃けてスタッフが瞬く間に椅子を並べていく。その10分もかからないスムーズさは様式美とも言える素晴らしさだった。
▲勝利時の感情の発露こそ、クーペ&ビートラ。
▲「第18回クーペレーションカップ」優勝
3rd Monster(まいける(CH)/ボス(YU)/GS|SHO(YU)/ヨモダ(DU)/ミモラ(MA))
(DreamHack official photoより)
▲「2023 The 18th BEAT TRIBE CUP」優勝
ヴィラン連合(やそかみ(LE)/亜希(LI)/ちんぱん(JA)/ちのブラッド(BR)/ホームステイアキラ(AK))(DreamHack official photoより)
祭は終わらない
筆者は前回の浅草ヒューリックホールで初めてクーペに出会った新参者だが、そのプレイと熱にあてられて当時勝手ながら筆を取った。
そしてコロナ禍を越えてついに開催されたクーペ&ビートラ。ビートラは今回初めて取材させてもらったが、クーペとは違うバーチャ勢の祭りを楽しむ勢いに圧倒された。
もちろんこういった大きな大会にフォーカスすることに意義はあるが、それ以外に各地のゲーセンでも大会は開かれている。
例えば今回に限ってはクーペ恒例の同キャラ5on5の前夜祭が無かったので、ビートラ同日に大山ニュートンで後夜祭が開催されていた。
「esports」と呼ばれるゲームの競技シーンが持て囃されている昨今だが、日本で生まれたゲームセンター文化や格闘ゲームの歴史にも他にはない魅力がある。
クーペやビートラに魅力を感じたならば、そこで戦い続ける人たちや支え続ける人たちがいることを知り、応援し、ゲームをプレイすることがシーンの貢献へとつながるに違いない。
また、この舞台で出会えることを。
関連リンク
第18回クーペレーションカップ公式パンフレット
イラスト/デザイン:吉原基貴@Yoshihara_Game
2023 The 18th BEAT TRIBE CUP公式サイト
2023 The 18th BEAT TRIBE CUP公式パンフレット
イラスト/デザイン:いけだつかさ@akalauko
【大会配信アーカイブ】
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